快適な診療体験の提供
pd診療(フィールベース診療)とは
当院の院長はWHO(世界保健機関)顧問を務めたDr.Daryl.R.Beach(Dr.ビーチ)の提唱するpd診療(水平診療)を修得しています。
歯科診療は、基本的には歯の切削など広い意味での外科処置が中心であり、お口の中という狭い作業域で正確さを求められる、きわめて精密な作業です。そのため、診療にはかなりの精神的・身体的ストレスがかかります。疲労により歯科医師の集中力が低下すれば、誤ってお口の中を傷つけかねません。質の高い歯科治療を継続して行うためには、診療に集中できる環境が必要なのです。精神的・身体的ストレスが少なく、短時間に正確度の高い診療を実現するために、使用する器械や器具の選択やその配置、診療の手順、アシスタントの役割などを含め、生理学的に裏付けられた「固有感覚」から導き出されDr.ビーチが構築した論理的診療システムおよびテクニックを総称して、pd診療(水平診療)あるいはフィールベース診療と呼んでいます。
(pdとは、Proprioceptive Derivationの略で、「固有感覚により導き出される」という意味です。)
1水平診療
人間が最もリラックスしているのは眠っているときで、地球の重力に対して体を水平に保ち、仰臥して最も多くの面積で体を支えた状態です。そして、体を束縛するものがなく各部分を自由に動かせることです。そのためにはバケット状や屈曲したシートで動きを束縛するのは好ましくありません。また、人間の体には圧迫されると不都合な部位がありますから、この部位をさけ、体圧分布に配慮して支持する必要があります。
当院では、すべて水平診療専用に開発されたスペースラインEMCIA(イムシア)という治療用チェアーユニットを使用しております。
このチェアーは、治療時には背もたれが後ろに倒れて、ほぼ水平になります。そのため上半身と下半身の血圧が一定になり、患者さんをリラックスした状態に導きます。 また、切削器具などの歯科特有の器械が背もたれの内部に格納されていますので、視覚から必要以上の不安を感じることもありません。なかにはリラックスし過ぎて治療中にもかかわらず、眠ってしまう方もいらっしゃるほどです。
しかし、患者さんの中には腰痛などで水平治療が適さない方もいらっしゃいます。
治療内容によってはチェアーを倒さずに行うことも可能ですので、事前にお申し出下さい。
2ミラーテクニック
お口の中は、精密作業を行うには最悪の環境です。
頬や舌などの存在が作業を妨げ、暗くて見えにくく、手指や器具の挿入方向が限られ、またそれを自由に動かすスペースが限られている。皆さんが歯科治療をうける際、長時間大きく口を開けなければならなかったり、口から頬にかけて強く引っ張られることがあるのはそのような理由があるからです。
それでも、お口の中のすべての部位を直接見ること(直視)ができればよいのですが、残念ながらそれも不可能です。姿勢を崩した無理な体勢で口の中をのぞき込んでも、死角になって絶対に見えない箇所も少なくありません。
ミラーを使用して確認すること(鏡視)は可能ですが、通常の場合、ミラーを見ながらでは治療に必要な器具が挿入できないため、確認作業のためだけに使用されているケースが多いようです。
このような悪条件の中で、患者さんの苦痛を少なくして(できれば快適に)、短時間に精密な診療を実現するのに不可欠な技術が、pd診療の中心となるミラーテクニックです。歯科治療用のミラーには2つの使い方があります。1つは、先に述べた作業点(むし歯や歯石の位置あるいは治療中・治療後の状態)の確認に用いる使い方で、これをチェッキングビュー(Checking View)と呼びます。一方、実際に歯を削ってむし歯を除去している時に、リアルタイムで連続して作業点を注視していく使い方をワーキングビュー(Working View)と呼びます。ミラーテクニックとは、主にワーキングビューのことを指しています。
ワーキングビューが使える歯科医師は、「直視」と 「鏡視」にこだわらず、どの部位もまんべんなく「死角」 なく見えるため、自分の姿勢を崩さずにほとんどの口腔内の作業を行うことが可能です。そのため治療の正確性と安全性が向上し、結果として、患者さんのストレスの減少、さらに当院のコンセプトである快適な歯科診療につながっていくことになります。
34ハンドテクニック
ミラーテクニックを使いこなすには大きなハードルがあります。それは歯科医師の力だけでは、完璧なミラーテクニックを実践することが難しいということです。治療中には歯科医師の両手(2ハンド)は切削器具とミラーでふさがっているので、作業を妨げる頬や舌を排除したり、唾液や冷却水を吸引するアシスタントが必要になります。歯科医師の2本の手にアシスタントの2本の手が加わった状態で行う治療のことを4ハンドテクニックまたは4ハンドシステムといいます。一定の訓練を受け習熟したアシスタントが診療に参加することで、ミラーが自由に動けるスペースが確保されるだけでなく、的確な器具の受け渡し等のアシスタントワークにより時間のロスを防ぎ、精密な治療を効率よく行うことが可能になります。この4ハンドシステムに裏打ちされたミラーテクニックは、快適な歯科診療を目指す当院の最大の特長といえます。
更に詳しく知りたい方へ
発症前治療としての予防歯科・メインテナンス
予防歯科
歯の病気は大別して、むし歯と歯周病(いわゆる歯槽膿漏)に分類されますが、現在ではいずれも口腔内常在菌(ひとの口の中に元々存在する細菌)による感染症であることがわかっています。
細菌感染症とは、肺炎や結核などをイメージして頂ければわかりやすいと思いますが、肺炎球菌や結核菌などの原因菌の感染により、化膿(腫れや痛み)などの症状を発現します。医科ではこのような患者に対して、原因菌の除去を目的に抗生物質(化膿止めのくすり)を投与したり、点滴による栄養状態の改善をはかります。原因が除去されれば人間のもつ免疫力(抵抗力)により自然に治癒していきます。そのための手助けをするといった感じでしょうか。
ところが、むし歯や歯周病は口腔内常在菌による感染症であるため、くすりにより原因菌を完全に除去することは出来ません。また、むし歯により失われた歯や、歯周病により失われた骨には再生能力がないために、自然に回復することはありません。そのため、むし歯を「早期発見して」「細菌により破壊された部分を外科的に除去し」「欠損部分を金属などの人工材料で補って、機能回復をはかる」というプロセスで治療が行われます。特に最後の「欠損部分を人工材料で補って機能回復をはかる」ことに重点がおかれているのが実情です。
しかし長期間の統計により「虫歯を早期発見し、削って詰める」というプロセスで治療された歯は、二次的に発症する虫歯を予防できないため、時間の経過とともに虫歯が再発してしまいます。虫歯が再発して治療を繰り返せば、詰め物のサイズが大きくなってどんどん自分の歯は少なくなっていき、歯の中の神経にまで及ぶと神経を取り除かなければならなくなります。神経を失った歯は脆くなり歯が割れたり、神経を失った歯特有の病気にかかったりして、ついには歯を抜かなければならなくなります。このような過程を辿って歯は失われてしまうのです。まずは部分入れ歯、そして最終的には総入れ歯になってしまうわけです。
その反省から、歯科治療の流れも最近では「早期発見して、破壊部分を外科的に除去し、欠損部分を人工材料で補う」というものから、定期的にバイオフィルム(むし歯や歯周病の原因菌の塊)の除去を行うことで、できるだけ欠損の時期を遅らせるようにマネジメントしていく方向へと向かいつつあります。
この考え方は山形県(酒田市)の熊谷崇先生(日吉歯科診療所)が提唱されているメディカルトリートメントモデル(MTM・医療の観点からの歯科医療)として体系化されています。
(当院の院長は熊谷先生の主宰するSATオーラルフィジシャン育成セミナーを2007年に修了しております。)
患者さんは歯の疾患について、これまでは病気というより事故やけがに近いイメージで考えられてきたのかもしれません。そのため痛くなるまで放置する、痛くなければ病気ではないと考える。痛くなれば想定外の事故にあったかのように感じてしかたなく歯科医院を受診する。
しかし痛みや不具合を生じてから初めて受診し治療を受けても、その後はまた問題を生じるまで放置する。この悪循環ではお口の健康を維持することは困難です。
全身疾患でいえば癌などは予防できるとは限りませんし、高血圧や糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞など日本人の主な死亡原因とされる疾患についても欧米化した食生活などにより、予防するといっても限界があると思われます。しかし、むし歯と歯周病はいずれも口腔内常在菌による感染症ですから、定期的なプロフェッショナルケア(PMTC)により、かなりの確率で予防することが可能であり、熊谷先生をはじめ、予防に真剣に取り組まれている全国の先駆的な先生方により実践され、大きな成果を上げています。また最近の学術研究でも科学的に立証されてきています。
当院もこのような医療システムMTMを導入・実践し、その理念と長所を患者さんと共有したいと考えています。
MTMは定期的に歯のクリーニングをすればよいというのではなく、定期的に各種検査のデータを積み重ねてその情報に基づいて行うことが重要な意義をもちます。個々の患者さんお口の状態は当然異なる訳ですから、クリーニングの方法もそれぞれ異なります。前回はA歯科医院、今回はB歯科クリニックというのでは、その効果は不十分です。MTMにおけるクリーニングとは、むし歯・歯周病の発症前治療と考えて下さい。
当院の予防歯科では各種の検査を行い、個別に詳細な情報提供とバイオフィルムや歯石を除去する初期治療、そして、どのくらい口の中の状態が良くなったのかを再評価し、その上で、3ヶ月~6ヶ月に1度丁寧にバイオフィルムを取り除くメインテナンスを継続していきます。(もちろん併行して治療が必要な歯については処置を行って行きます。)
このような歯科医療システムは、まだ日本では新しいものですが、欧米においては病気の情報について十分な説明を受けて、歯科医院に定期的に来院し、プロフェッショナルケアとしてのメインテナンスを受けることは常識であり、実に80%の国民がそれを実行しています。一方日本では、このような医療を行う施設が少ないため、残念ながらわずか2%の国民しか定期管理を受けていません。しかし最近では日本でも、定期的な口腔管理を行う歯科医院への要望はきわめて高くなっています。
その要望に応えられるようにと考えております。
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やり直しを避ける根本治療の追究
当院における治療の最大の目的は、治療結果が長持ちする環境の獲得、つまり、患者さん自身が自分で清掃しやすいお口の環境を作ることです。
長期にわたり安定した状態を保つためには、患者さん自身が清掃しやすい口腔内環境を確立することが大切な要素になります。
当院では、患者さん自身の歯を最大限残す努力を行い、天然歯で長く噛んでいただけるように発症前治療としての予防やメインテナンスに力をいれて取り組んでいます。
しかし、不幸にもむし歯や歯周病が進行し、歯や骨を失った場合には、一時的な痛みや腫れを解決するだけの1本単位の歯の治療を考える対症療法ではなく、お口を臓器のひとつ(咀嚼器官)ととらえ、根本的な原因を改善する、広く全体的な視野での治療(一口腔一単位治療)計画を立てることを心がけています。患者さんのお口の中に見られる問題点を徹底して解決する治療計画を立て、さまざまな治療を実践しています。
特に歯周病は1本の歯だけではなく、全体的に広がって進行することが多いため、それぞれの歯に対する適切な処置と咀嚼器官としての機能回復を同時に行うことが重要です。そのためには単なる歯周基本治療だけでなく、歯周組織再生療法などの歯周外科治療、咬み合わせ改善のための修復補綴・インプラント治療、清掃困難な歯ならびの改善を行う限局矯正治療などを駆使した総合治療が必要になります。
結果として、歯や骨を再建し、しっかり噛むことができるだけでなく、治療後の健康状態が長期間安定して維持できる環境の獲得を目指します。